前回の記事では、ハワイ語で鳥という意味の「manu」がつく地名を紹介した。今回は、いろいろな鳥の名前がつく地名を探してみる。地名というが、前回同様、山や川などの名前も含めて紹介する。
アエオ ʻAeʻo(セイタカシギ)の地名
ククルアエオ Kukuluaeʻo
ホノルルのケワロ港(Kewalo Basin)に面していた区画の名前。ククルアエオは、アエオの別名。現在の町の姿からは想像しがたいが、昔は沼地で、塩田や魚の養殖池などがあったそうだ。当然、アエオもたくさんすんでいたであろう。
アラエ ʻAlae(バン)の地名
アラエ ʻAlae
ハワイ島のホノムー(Honomū)と、マウイ島のクラ(Kula)にある地名。また、ハワイ島のキーラウエア・クレーター(Kīlauea Crater)近くにあるクレーターや、モロカイ島にあるの山の名前にもある。
アラエ・イキ ʻAlae Iki
マウイ島のキーパフル(Kīpahulu)近くにある地名。直訳すると「小鷭」
アラエ・ヌイ ʻAlae Nui
アラエ・イキの近くにある地名。直訳すると「大鷭」
アラエロア ʻAlaeloa
マウイ島のホノルア(Honolua)にある地名。直訳すると「遠鷭」
アラエロア・ヌイ ʻAlaeloa Nui
マウイ島のホノルア(Honolua)にある地名。直訳すると「遠小鷭」
ナーアラエ Nāʻalae
マウイ島のプウオカリ(Puʻuokali)にある峡谷の名前。「nā」は結びつく名詞が複数の場合に使われる冠詞で、英語では通常「the」と訳される。
ワイアラエ Waiʻalae
ホノルルのウィルへルミナ・ライズ(Wilhelmina Rise)とアーイナ・ハイナ(ʻĀina Haina)の間に位置する地区の名前。直訳すると「鷭水」となり、この場所の湧水にちなんだ名前だと伝えられている。ワイアラエのすぐ近くにあるダイヤモンドヘッドにも昔はバンがいたというから、ワイアラエにも昔は水辺があって、たくさんのバンがすんでいたのだろう。今の町並からは全く想像できない。
余談だが、カーハラ(Kāhala)とカイムキー(Kaimukī)を東西に走るその名もずばりワイアラエ通りに、「Mud Hen Water」という雰囲気のいいレストランがある。このMud Henとはバンのことで、つまり店の名前はワイアラエを英語にしたものである。
またワイアラエは、カウアイ島のワイメア(Waimea)にある川、滝、山の名前にもある。
アララー ʻAlalā(カラス)の地名
プウアララー Puʻuʻalalā
ニイハウ島北東部にある丘の名前。標高64メートル。直訳すると「烏丘」
ワイアカアララー Waiakaʻalalā
ハワイ島のカウー(Kaʻū)にある湧水の名前。直訳すると「烏による水」となる。湧水は、1907年の溶岩流のあとカラスによって見つけられたと伝えられている。
イヴァ ʻIwa(グンカンドリ)の地名
カイヴァ Kaʻiwa
カウアイ島のハナレイ(Hanalei)にある川や、オアフ島のラニカイ(Lanikai)にある尾根の名前。尾根からはオオグンカンドリが飛んでいる姿が頻繁に見られる。「ka」は冠詞で、英語では通常「the」と訳される。
ナーイヴァ Nāʻiwa
モロカイ島のカウナカカイ(Kaunakakai)にある地名。「nā」も、「ka」と同じような冠詞だが、結びつく名詞が複数の場合には「nā」が使われる。
ハレイヴァ Haleʻiwa
観光客にも人気がある、オアフ島ノースショアにある町の名前。直訳すると「グンカンドリの家」
イオ ʻIo(タカ)の地名
プウイオ Puʻuʻio
マウイ島にある丘の名前。標高866メートル。直訳すると「鷹丘」。イオは現在ハワイ島にしか生息していないが、化石から昔は他の島にも住んでいたことがわかっている。
イオラニ ʻIolani
ハワイ王室の宮殿の名前。地名ではないが、有名なので紹介しておく。ラニ(lani)には「王室の」とか「高貴な」などの意味がある。宮殿については他のたくさんのウェブサイトやガイドブックに詳しく書いてあるので、興味がある方はそれらを参考にしてほしい。
ウアウ ʻUaʻu(ミズナギドリ)の地名
プウウアウ Puʻuʻuaʻu
オアフ島のアイエアにある丘の名前。標高505m。直訳すると「ミズナギドリ丘」
ウーリリ ʻŪlili(メリケンキアシシギ)の地名
ナイアカウーリリ Naʻiakaʻūlili
ニイハウ島にある湧水の名前。「ウーリリが探した」という意味。この湧水がウーリリよって発見されたという言い伝えに由来するそうだ。
オーマオ Ōmaʻo(ツグミ)の地名
オーマオピオ Ōmaʻopio
マウイ島のマーケナ(Mākena)にある地名。直訳すると「さえずる鶫」
コアエ Koaʻe(ネッタイチョウ)の地名
コアエ Koaʻe
ハワイ島のマクウ(Makuʻu)にある地名。
コアエケア Koaʻekea
マウイ島ハーナ(Hāna)にある地名。ハワイ島ハーマークア(Hāmākua)にある崖の名前にもある。コアエケアとは、シラオネッタイチョウのこと。ケア(kea)は白という意味。その名の通り、尾羽が白い。尾羽が赤いアカオネッタイチョウもいるが、こちらはコアエウラと呼ばれる。ウラ(ʻula)は赤という意味。
パリコアエ Palikoaʻe
ニイハウ島の北東部にある地名。直訳すると「ネッタイチョウ崖」
プウコアエ Puʻukoaʻe
モロカイ島、マウイ島、ハワイ島にそれぞれある丘や、カホオラヴェ島の南にある小島の名前。直訳すると「ネッタイチョウ丘」
レレコアエ Lelekoaʻe
モロカイ島北部の地名。直訳すると「ネッタイチョウの戦い」
コーレア Kōlea(チドリ)の地名
アカニコーレア Akanikōlea
ハワイ島のキーラウエア・クレーター(Kīlauea Crater)近くにある地名。直訳すると「千鳥鳴き」
コーレアリイリイ Kōlealiʻiliʻi
オアフ島のワイアナエ・バレー(Waiʻanae Valley)にある丘の名前。標高382メートル。直訳すると「小千鳥」
パパコーレア Papakōlea
ハワイ島南部、アメリカ合衆国最南端のサウス・ポイント(Ka Lae)近くにある浜。グリーンサンドビーチとも呼ばれる。世界に4箇所しかないという珍しい緑色の砂で有名。また、オアフ島ホノルルのパウオア(Pauoa)にある、ネイティブハワイアンの住居コミュニティの名前としても知られる。直訳すると「千鳥平地」
コロア Koloa(カモ)の地名
ワイコロア Waikoloa
ハワイ島に点在する地名で、地区、川、丘、池などの名前。直訳すると「鴨水」
ワイコロア・イキ Waikoloa Iki
ハワイ島のワイピオ(Waipiʻo)にある地名。直訳すると「小鴨水」
ネーネー Nēnē(ガン)の地名
キープカネーネー Kīpukanēnē
ハワイ島のハワイ火山国立公園にあるキープカの名前。キープカ(kīpuka)とは、新しい溶岩流に埋め尽くされることなく残った古い溶岩の土地のこと。荒涼とした溶岩地帯のなかでキープカだけは木々が茂っていることが多く、まるで溶岩の海に囲まれた「島」のようになっているキープカも多い。
ネーネーハーナウポー Nēnēhānaupō
モロカイ島北部にある岬の名前。直訳すると「夜(に)産む雁」
プウネーネー Puʻunēnē
ラーナイ島、マウイ島、ハワイ島にある地名。直訳すると「雁丘」
ワイネーネー Wainēnē
モロカイ島北部にある地名。直訳すると「雁水」
ノイオ Noio(アジサシ)の地名
アナノイオ Ananoio
モロカイ島北部の地名。アナ(ana)には洞窟や小さなほら穴の意味があり、日本語の「穴」と一致するのはただの偶然だろうか。直訳すると「アジサシ洞窟」
モクノイオ Mokunoio
マウイ島のカウイキ(Kaʻuiki)沖にある小島の名前。直訳すると「アジサシ島」
ラエノイオ Laenoio
ハワイ島のケアラケエ(Kealakehe)近くにある岬の名前。直訳すると「アジサシ岬」
ハワイミツスイの地名
オロケレ Olokele
カウアイ島のワイメア(Waimea)にある川、渓谷、サトウキビプランテーションの名前。オロケレとは、イイヴィ(ʻIʻiwi)というハワイミツスイの別名。
プウオーオー Puʻuʻōʻō
ハワイ島のヒロ(Hilo)、コハラ(Kohala)、プアコー(Puakō)にそれぞれある丘の名前。また、ハワイ島中央部にあるトレイルの名前でもある。オーオー(ʻŌʻō)は、ハワイミツスイの一種だが、すでに絶滅している。直訳すると「オーオー丘」
プエオ Pueo(フクロウ)の地名
カウラナプエオ Kaulanapueo
マウイ島のハイクー(Haʻikū)にある地名。直訳すると「梟止まり木」
カプエオカヒ Kapueokahi
マウイ島のハーナ(Hāna)にある港の名前。直訳すると「一羽の梟」
カラーフアプエオ Kalāhuapueo
モロカイ島のカマロー(Kamalō)にある地名。直訳すると「梟の卵の一日」となるが、もともとはカラーフイプエオ(Kalāhuipueo、梟の家族)だったものが変化した可能性もあるという。
カラプエオ Kalapueo
オアフ島のマカプウ(Makapuʻu)近くにある地名。直訳すると「梟宣言」となる。伝承では、梟たちが、戦うためにこの地で仲間を集めたという。
プウプエオ Puʻupueo
オアフ島のカエナ・ポイント(Kaʻena Point)、ワイカーネ(Waikāne)、マーノア(Mānoa)に、同じ名前の丘がある。直訳すると「梟丘」
プエオ Pueo
ニイハウ島にある岬の名前。
プエオアオ Pueoao
モロカイ島北部の浜の名前。直訳すると「日光梟」となる。ちなみに、フクロウ類は夜行性というイメージがあるが、プエオ(コミミズク)は早朝と夕方に最も活発で、日中でもよく行動する。
プエオフルヌイ Pueohulunui
ハワイ島のカウー(Kaʻū)にある地名。直訳すると「立派な羽の梟」
フルフルプエオ Huluhulupueo
マウイ島のワイルク(Wailuku)にある川の名前。直訳すると「梟羽」
マナワイプエオ Manawaipueo
マウイ島のマーアラエア(Māʻalaea)にある峡谷の名前。マナワイ(manawai)は「(川の)支流」という意味。
モーリー Mōlī(アホウドリ)の地名
モーリーレレ Mōlīlele
ハワイ島のワイオアヌキニ(WaioʻAhukini)にある崖の名前。直訳すると「跳ねるアホウドリ」
以上、いろいろな鳥の名前がつく地名を探してみた。プエオ(フクロウ)やアラエ(バン)がつく地名が特に多かった。プエオもアラエも、昔は人々の生活のなかで身近な鳥だったろうし、存在感もあるために印象が強かったと思われる。また両者とも、アウマクア(ʻaumakua、守り神)としてハワイ人から崇められてきた鳥だ。
プエオやアラエもそうだが、他にネーネー(ガン)、コロア(カモ)、イオ(タカ)、イヴァ(グンカンドリ)などの中~大型の鳥の名前がついた地名が多く、ハワイミツスイ類、ヒタキ、ツグミなどの森の小さな鳥たちの地名がほとんどないのは意外だった。
イイヴィ(ベニハワイミツスイ)やエレパイオ(ハワイヒタキ)も、プエオやアラエ同様アウマクアであり、昔の人々にとって馴染みのある鳥だったはずなのだが、地名に見られないのはどういうわけだろう。ハワイの地名や歴史に詳しい人と話す機会があれば、ぜひ尋ねてみたい。
写真はすべて筆者による撮影
参考文献
- Mary Kawena Pukui, Samuel H. Elbert『Hawaiian Dictionary (Revised and enlarged edition)』University of Hawaiʻi Press(1986年)
- Mary Kawena Pukui, Samuel H. Elbert, Esther T. Mookini『Place Names of Hawaii (Revised and expanded edition)』University of Hawaiʻi Press(1974年)